腎臓のはたらき
腎臓の主な作用
前項の腎臓の構造に続いて、「腎臓のはたらき」についてみていきましょう。
まず、腎臓の主なはたらきにはどんなものがあるのでしょうか?
1,生体の代謝産物(老廃物)を排泄します。
2,体液の濃度・量・pHの調節をします。
3,これによって、生体の恒常性(homeostasis)を維持します。
「恒常性を保つ」とは体内の環境を一定にするということです。
図1,
尿ができるまで
では、「腎臓のはたらき」はどのような経路をとって行われるのでしょうか?
体内から腎動脈を介して入った血液は枝分かれして各々のネフロン
(人体では約200万個あり=腎臓の構造参照)に入っていきます。
ネフロンに入る血管を輸入細動脈といいますが、この動脈は糸球体に
入って毛細血管網をつくります。
この毛細血管の壁とボーマン嚢の壁はそれぞれ1層の細胞層で接しております。
この壁を通して毛細血管の血漿の濾過がおこなわれます。
このボーマン嚢の中に出された糸球体濾過液は尿細管の方に流れていきます。
濾過液は尿細管を流れるうちにその約99%がまた再吸収されます。
この再吸収は必要とされるものの再吸収が多いために、選択的再吸収
といわれます。
尿細管は近位尿細管から始まってヘンレ係蹄・遠位尿細管・集合管と
続いております。
また、ある物質は尿細管に沿って走っている血管(静脈)から尿細管へ
と分泌されます。
腎臓はこのように濾過・再吸収・分泌が三位一体となって、最終産物=尿を
作り出していきます。
糸球体濾過
糸球体濾過は糸球体の有効濾過圧と糸球体毛細血管の透過性そして
濾過面積によってきまってきます。
ふつう糸球体濾過量は約120ml/minで、一日量に直すと180Lになります。
そして、この量は腎臓を流れる血漿の約20%に相当するといわれております。
実際に糸球体濾過量を測定するにはイヌリンまたはクレアチニンを使用します。
それは両者とも腎臓で代謝されないで、糸球体を自由に通過して、
さらに尿細管で再吸収されないために、これを測定すると容易に糸球体濾過量
がわかるからです。
糸球体濾過量(GFR)=尿中濃度(U)÷血漿中濃度(P)×単位時間当たりの尿量(ml/min)
また、ある物質が腎臓で完全に除去される血漿の量をその物質のクリアランスといいます。
クリアランス(C)=尿中濃度÷血漿中濃度×単位時間当たりの尿量(ml/min)
イヌリンは糸球体濾過量とクリアランスが一致しますが、尿細管から分泌される
場合は増加しますし、尿細管から再吸収される場合は減少します。
それでは、それぞれの物質の動きをみてみましょう。
1)、水
成人男子の糸球体濾過量は125ml/分(女子は10%減)です。
一日量は180Lにも達します。
この水分はほとんどが浸透圧勾配によって尿細管から再吸収されて、
尿として出されるのは約1.5Lにすぎません。
約99%以上が尿細管で再吸収されることになります。
そのうち近位尿細管からは80%・ヘンレの係蹄は6%・遠位尿細管は9%・
集合管からは4%再吸収されます。
2)、Na(ナトリウム)
腎臓は体液のナトリウム(Na+)の量を調節する大事な臓器です。
このNa+は尿細管から再吸収されます。
近位尿細管ではNa+の80%が再吸収されます。
下の図のようにNa+は尿細管上皮細胞に受動的に拡散します
(尿細管の内腔は上皮細胞に比べて電位が高くなっております。)。
つぎに能動的輸送(ATPというエネルギーを使った輸送=ナトリウムポンプ)
によって尿細管細胞から基底膜を通って間質液の中にくみ出されます。
このとき、Cl−(塩素イオン)・HCO3-(重炭酸イオン)も一緒に再吸収されます。
このNa+の再吸収には水分の再吸収も伴ってきます。
図2,
3)、ブドウ糖
糸球体濾過液には血漿と同程度のブドウ糖が含まれております。
このブドウ糖は能動輸送によって、ほとんど全て近位尿細管から再吸収されます。
しかし、血漿のブドウ糖が200mg/dl以上になると再吸収が間に合わなくなって
尿中に出てきます。
ブドウ糖は一日約180g濾過されます。
4)、アミノ酸
糸球体で濾過されたアミノ酸も近位尿細管で100%再吸収されます。
アミノ酸は一日約70g濾過されます。
5)、蛋白質
糸球体濾過液に出る蛋白質(アルブミン)は少量です。(一日54g)
しかし、蛋白質は体を構成する大事なものですので、その喪失は
大きな損失になります。
蛋白質は分子量が大きいため、特殊なかたちで(pinocytosis)再吸収されます。
それは、尿細管上皮の一部が陥凹して蛋白質分子を取り込んでしまう
飲作用によっておこなわれます。
6)、尿素
糸球体濾過液中の尿素は血漿と同程度含まれますが、
尿細管から約60%が再吸収されます。
7)、尿酸
尿酸は再吸収率が85%で、尿細管では再吸収と分泌の双方が
おこなわれます。
8)、クレアチニン
クレアチニンは尿細管での再吸収はおこなわれず、分泌がなされるために、
尿中の濃度は血中よりも高くなります。
9)、カリウム(K+)
カリウムは食事で摂取した量の90%が腎臓から、
10%が糞便中に排泄されます。
糸球体濾過液の70−80%が近位尿細管から、10%がヘンレ係蹄から
再吸収されます。
また、K+は遠位尿細管・集合管でNa+の再吸収と交換されて、
分泌されます。
これにはアルドステロン(ホルモンの一つ)が関係しております。
10)、水素イオン(H+)
水素イオンは近位尿細管ならびに遠位尿細管から分泌されます。
この水素イオンが分泌されることによって、体内の余分な酸を排泄して
体液のpHが一定に保たれます(恒常性を保つといいます)。
これによると、Na+ーH+交換輸送システムの働きによってNa+とH+が
交換されてNa+とHCO3- が毛細血管へと送られます。
この関係の式は次のようになっております。
H2O + CO2 → H2CO3 → H+ + HCO3-
このH+がNa+と交換されて尿中に排泄されます。
11)、アンモニア(NH3)
アンモニアは尿細管内でグルタミンからグルタミナーゼの作用によって作られ、
尿細管内腔に分泌されます。
尿細管内腔では水素イオン(H+)と反応してアンモニウムイオン(NH4+)となって、
尿中に排泄されます。
12)、塩基
Cl-(塩素イオン)
ほとんど再吸収されます。
HCO3-(重炭酸イオン)
CO2の形で再吸収がおこなわれます。
Cl-とHCO3-は陰イオンとして相互に補完しあいます。
そして、総陰イオンを一定にするように働きます。