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ピロリ菌と胃癌












1,ピロリ菌ってなんですか?

ピロリ菌(Helicobacter pylori)は図を見てわかりますように、鞭毛をもった螺旋形の

細長い細菌です。

鞭毛をもつために胃のなかを自由に泳ぐことが出来るといわれております。

分類ではグラム陰性桿菌に入ります。ピロリ菌の長さは3-5μmくらいです。

以前は胃の中は胃液は強い酸性を示すため、この中ではとっても細菌は

生きてはいけないだろうと考えられておりました。

ところが、1983年にオーストラリアのワーレンとマーシャルがこの細菌の存在を

発見して発表したことで、胃の中にも細菌が棲息できることがわかってきました。

2,どの位の人がピロリ菌を持っているのですか?

ピロリ菌の感染経路はいまひとつはっきりはしませんが、汚染された食物や水、あるいは

糞便から感染するようです(水系感染)。

そして、ほとんどの人は子供のころに感染するといわれております。

このことから、衛生状態の悪い地方にピロリ菌感染者が多くなります。

開発途上国ではおよそ8割・米国で5割・欧州で3割の感染者がいると言われております。

日本では若い人は少なくなっておりますが、40歳以上の人が殊に高率の感染率のようです。
 

3,ピロリ菌は胃の中でどんなことをしておりますか?
 

このピロリ菌は胃に入ると胃の上皮細胞にぴたっと接着するといわれております。

これによって、胃の粘膜上皮細胞のムチンが減少してしまいます。

また、この細菌はウレアーゼをもっているため、アンモニアを生成します。

このアンモニアが胃の中の強酸から細菌を守る働きをもっております。

そして、このアンモニアが過酸化水素(H2O2)と反応して、モノクロラミンを作って、これが細胞毒

としてはたらきます。これらが相互にはたらいて胃の粘膜細胞が障害を受けてくるようになります。

また、ピロリ菌によって、胃上皮細胞からの炎症性サイトカインの産生を促すことも報告されております。

*ムチン(胃粘素)ーーー胃の粘膜上皮細胞から分泌される一種の糖蛋白質。

               胃内面を被って粘膜を保護する作用を持っております。

               局所の循環障害が起きると、その部位のムチンが欠乏して、胃潰瘍が起きてきます。
 
 
 

4,ピロリ菌感染の診断

 直接検出法

  組織染色法

  細菌培養

  PCR法

 間接的検出法

  クローテスト

  ピロリ抗体の検査
 
 

5,ピロリ菌と胃炎の関係

自己免疫型以外の慢性胃炎(いわゆるB型胃炎)に関与しているといわれております。

胃にピロリ菌が感染しますと、胃の粘液上皮細胞のムチンが失われるため、胃の表面から

粘液が失われてしまいます。そして、そのような胃の表面に酸が作用して、粘膜の障害が

起きて”びらん”が起こってきます。そうして慢性胃炎がおきてきます。

この慢性胃炎のなかでも胃粘膜が巨大に肥大する病気にメネトリエール病というのがありますが、

この病気にもピロリ菌が大きく関与しているのがわかってきました。

(最近では自己免疫性の胃炎にもピロリ菌の関与を否定できない見解が出てきております)。
 
 

6,ピロリ菌と胃十二指腸潰瘍の関係

ピロリ菌による慢性胃炎の状態がつづくと、上皮細胞障害に加えて、血流障害や運動障害

も起きてきます。そして、障害が深くなっていき、胃潰瘍や十二指腸潰瘍が発症してきます。

ことに十二指腸潰瘍にはピロリ菌が大きく関与しているといわれております。

このようなピロリ菌の関与する胃潰瘍・十二指腸潰瘍に対して、除菌治療をするとみごとに潰瘍

の治癒をみることが確認されております。

ピロリ菌が関与する胃潰瘍・十二指腸潰瘍では除菌治療したあとは潰瘍の再発は認められない

又は少ないとされております。
 
 

7,ピロリ菌と胃癌との関係

ピロリ菌と胃癌との関係については議論の多いところではありますが、ピロリ菌を持っている人

はそれを持っていない人に比べて胃癌の発生率は3−6倍高いことが知られております。

1998年にはピロリ菌によって胃癌が発生させ得ることが動物実験(スナネズミ)によって確認

されております。

1994年にWHOのIARCではピロリ菌を煙草と同じように発癌因子(definite cartinogen :group 1)

と認定しております。

では、ピロリ菌の発癌性とはどういうことでしょうか?

まだはっきりとは判りませんが、次のような要因が考えられております。

い)ピロリ菌感染は胃の粘膜細胞にたいする増殖性を亢進させる働きをもっております。

ろ)ピロリ菌感染は胃上皮細胞のアポトーシス(後記参照)を誘導させ、萎縮性胃炎を

 引き起こします。(萎縮性胃炎は前癌状態といわれております。)

は)ピロリ感染によって活性酸素や一酸化窒素(NO)などの粘膜障害因子が生じてきますが、

 これら粘膜障害因子によってDNAなどの細胞障害を引き起こします。

そして、この細胞障害が修復されないと、突然変異などによって癌が発生してくるとするものです。

一般にはピロリ菌感染者あるいはピロリ菌抗体陽性者と胃癌の発生頻度との間には相関関係

があることが報告されてきております。しかし、中には例外もあって、アフリカではピロリ菌感染者

が多いにも拘わらず胃癌患者の発生が少ないことが報告されております。

また、ピロリ菌感染者はピロリ菌非感染者よりも胃癌に罹る度合いが多いことは確かですが、

ピロリ菌非感染者に胃癌が発生しないという訳でもありません。

胃癌は一般に胃の慢性の炎症から胃粘膜の萎縮性変化を引き起こすことから起こるとされております。

この萎縮性変化を引き起こす原因はピロリ菌以外にも多くあります。

しかし、このなかでもピロリ菌によるものは近年まで見逃されてきました。

日本人も若い人のピロリ菌感染者は少ないのですが40−50歳以上と年齢が高くなるにつれてピロリ菌

の感染者が増えております。

そして、胃癌の発生の母台といわれる胃の粘膜の萎縮は50歳以上でピロリ菌感染者では80%にみら

れるのに対してピロリ菌非感染者ではわずか5%にしかすぎないと言われております。
 

*アポトーシスーーー細胞の機能的な死を意味します。

             成長過程ではアポトーシスが頻繁におこります。そして、この時のアポトーシス障害

             は奇形を生み出す怖れがあります。

             また、日常の生体活動をするときには多くの細胞が生産供給されて、同じ数の細胞

             は除去されますが、このときにもアポトーシスが起こってきます。

             そして、ウイルスによって感染した細胞や悪性腫瘍細胞などの生体にとって危険な

             細胞を排除するときにもアポトーシスが起こります。

             アポトーシスが起きると細胞が小さくなって核が凝縮して、細片化してきます。

             最後はマクロファージなどに貪食されます。
 
 

8,ピロリ菌を除菌する治療法について。
 

除菌療法はまだ試行段階ですが、下記の組み合わせで90%の除菌効果が出たとされております。

日本では平成12年11月1日からピロリ菌除菌の保険が適用になりました。

「ヘリコバクター・ピロリ感染診断および治療に関する保険上の取扱い」案
1.対象患者 内視鏡検査または造影検査において胃潰瘍または十二指腸潰瘍の確定診断がなされた患者のうち、ヘリコバクター・ピロリ感染が疑われる患者
2.検査法 @迅速ウレアーゼ試験A鏡検法B培養法C抗体測定D尿素呼気試験
3.除菌前の感染診断 1.の対象患者に対し上記の5項目の検査法のいずれかの検査を実施した場合に1項目のみ算定。ただし、検査の結果、陰性となった患者に対して異なる検査を再度実施した場合に限り、さらに1回に限り算定可能。
4.除菌治療 ヘリコバクター・ピロリ陽性であることが確認された患者に対し、薬事法上承認されている薬剤(ランソプラゾール、アモキシシリン、クラリスロマイシン)を同法の承認事項に従い、3剤併用・7日間投与する。
5.除菌後の感染診断 (1)除菌治療終了後、4週間以上経過した患者に対し検査を実施した場合に算定。取扱いは3の除菌前検査と同様。(2)除菌後の感染診断において、陽性となった患者について再度除菌を実施した場合は、再除菌および再除菌後の感染診断に係る費用を1回に限り算定。
6.感染診断実施上の留意事項 (1)ヘリコバクター・ピロリに対する静菌作用を有する薬剤が投与されている場合は、当該静菌作用を有する薬剤投与中止または終了後4週間以上経過していること。
(2)抗体測定を実施する場合は、除菌終了後6ヶ月以上経過し、かつ、除菌前の抗体測定結果との定量的な比較が可能であること。
7.実施時期 平成12年11月1日から適用

 
 

1)アモキシシリン+クラリスロマイシン+制酸剤(PPI=プロトンポンプ阻害薬)

2)アモキシシリン+メトロニダゾール+制酸剤(PPI)
 
 
 
 

9,ピロリ菌感染を防ぐために、つぎのことを励行しましょう。

い)生水を呑まないようにしましょう。

ろ)生ものを食べるときにはよく注意しましょう。

は)汚染されたまたは腐れた食べ物は食べないようにしましょう。

に)手で直接食物には触れないようにしましょう。

  おしゃぶりは止めるようにしましょう。

ほ)焦げた物またはしょっぱいものをいっぱい食べないようにしましょう。

へ)食事の前後には手を洗いましょう。

と)いつも、清潔を心がけましょう。


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